2015年1月14日にショッキングな報道がありました。これについて書かせて頂きます。

<報道記事>
生保悪用、6000万円脱税疑い 名古屋国税局がメーカー告発
法人向け生命保険商品の一つ「逆養老保険」を解約して戻ってきた約二億円を所得から除外し、法人税約六千万円を脱税したとして、名古屋国税局がメーカー某社と社長(56)を名古屋地検特捜部に告発したことが分かった。関係者によると某社は二〇〇七~〇八年、節税効果があるとされる逆養老保険を、大手生命保険会社(東京都)と契約したが、一一年に契約者名義を社長に変更した上で解約。社長が保険会社から受け取った解約返戻金に相当する額を意図的に除外し、所得を圧縮したとされる。逆養老保険の保険料は、一般的に法人の費用として扱われるため、節税効果があるとされる。ただ、途中で解約した場合、支払った保険料の総額などから算出される返戻金は、法人の所得として課税対象となる。同社の代理人弁護士によると、保険は社長ら役員や従業員の計五人を被保険者として同社が契約。五人の退職金を確保する目的で受取人は死亡保険金が法人、満期保険金は被保険者としていたという。国税局は一三年秋、強制捜査(査察)に着手。契約者の名義を社長に変更した時点で、同社に解約返戻金に相当する利益が出たのに故意に隠したと判断したとみられる。返戻金は、社長の個人口座に入金されていた。

逆養老(逆ハーフタックス・リバース)プラン(以下、GHT)については税務上の取り扱いは注意すべき点が多くあります。この注意点を踏まえまして本事案について書かせて頂きます。

1)途中解約の経理処理
法人契約のGHTを法人契約のまま解約した場合、解約返戻金=満期保険金受取原資であるため全額を満期保険金受取人が受け取る権利があり、あくまでも法人は仮受けにすぎないので「法人の所得として課税対象となる」という同報道は疑問を持たざるを得ません。

2)報道への疑問
この一連の報道に関して、正しい税務処理について触れているどころか「生命保険を使った節税」という表現が一人歩きしている事に強い危機感を持っています。

3)法人から個人へ名義変更?
そもそもGHTにおいて保険料の半分を「死亡保険金受取のための危険保険料=法人が負担=損金経理」とし、残り半分を「満期保険金受取のための積立保険料=満期保険金受取人が負担=給与・貸付・借入金返済等の処理」という考えに立てば満期保険金受取人を変えない契約者変更時においては、経理処理はしなくてもよいのではないか?という見解が考えられます。なぜ個人に名義変更をしなければならなかったのか?という疑問が残ります。

4)解約返戻金を個人受取した際の一時所得申告
本報道だけでは、個人での一時所得申告をしていない様にも受け取れますが、2011年の税制改正により個人が受け取った満期金等で法人が負担した保険料がある場合には、一時所得の計算時に控除が出来ないことが明文化されました。さらに2012年1月13日の最高裁判決において法人が負担した保険料相当額については個人での一時所得申告時には控除出来ない旨が明記されました。

仮に2011年の税制改正前の解約であっても、2010年12月16日に平成23年度の税制改正大綱に上記改正に関する原案が盛り込まれていたことを考えますと、一時所得申告をしていないのであればそもそも論外であると言えるでしょう。

GHTというスキームは法人と経営者や従業員、その家族を守るための「大義」であることは言うまでもありません。本当にこのスキームを必要としている法人や経営者は数多くあると思います。この「大義」を守るために正しい知識を持って正しい処理を行う様にアドバイスをすべきであるにもかかわらず、正しくない知識と正しくない処理が行われていたという事実に激しい憤りを感じました。

この経営者がどういう意図でGHTを導入したかは分かりません。新聞報道は「脱税」と報じていますが、経営者が本当に脱税を意図したのか?実はGHTを導入しなければならない「大義」があったかも知れません。ですから軽はずみにこの経営者を非難することは避けます。ですが、このGHTを取り扱った保険営業パーソンと顧問税理士は激しく非難をされるべきなのではないでしょうか?

そもそもの「実質」保険料負担の概念が間違えているために、
「解約時には法人の所得になる」

「法人の所得にならない様に個人へ名義変更をして解約」

「個人では一時所得の申告をしなくてよい」
というミスリードをしたのでは?と推測してしまいます。

生命保険は被保険者の万が一に備える「尊い金融商品」です。ただその「尊い金融商品」が持つ機能や効果があるために、法人や個人において活用することは、絶対に必要なことだと思っています。ですが、今回の報道の様にミスリードにより「生命保険が脱税に使われた」というレッテルが貼られた事に激しい怒りを感じます。

GHTや名義変更プラン(MHP)は明確な取り扱いルールがない商品です。だからこそ「なぜ必要なのか?」「取り扱う大義は何なのか?」にこだわる必要がありますし、「正しい処理は何なのか?」を明確にした上で保険税務に強い税理士・課税当局にきちんと主張が出来る税理士との連携は必要不可欠であると言えるでしょう。