【相談者概要】

・年商4億円 サービス業A社

・業績が好調だった過去に某社にて逆ハーフタックスプラン(逆養老・リバースプラン、以下GHT)を契約。年間保険料約3,000万円。

・契約をした法人が社会環境の変化にともない業績悪化。このGHTをどのようにすればよいか?

・同じ経営者でグループ内に業績が比較的堅調な法人B社(販売業・年商2億円)があり、こちらへの名義変更を含めて検討をしたい。

 

当該法人A社は既契約者で、GHT以外の生命保険を取扱しておりました。GHTは某社が提案し契約を取扱っております。A社は業績が悪化してきており、キャッシュは潤沢にあるのですが、このまま高額なGHT契約の保険料を負担し続けるのは将来的には問題があるので、何とかしたいとのご相談でした。

 

既契約のGHTについてのメンテナンス方法は以下の方法が考えられます。

 

  • 解約
  • 払済
  • 保険期間短縮
  • 受取人変更
  • 契約者変更

 

それぞれの手法につきまして、詳細に解説を行います。

 

<解約>

単純に支払保険料を止める事が出来ます。解約時の税務処理については、「実践!逆ハーフタックスの教科書」に詳細が記載されているので、そちらを参照して頂きたいのですが、法人は益金課税される事なく個人が全額を受取り、一時所得課税の対象になります。

 

<払済>

GHTは養老保険を活用しているために、養老保険の払済については法人税基本通達9-3-7(2)に従い、洗い替え処理を行っても良いですし、行わなくても構いません。支払保険料負担を止めながら満期時まで据え置く事になります。但しこの法人の場合は保険料の1/2相当額を役員報酬として処理をしていたので、期中で払済処理をしても、期末までの役員報酬分の負担は発生するので、キャッシュフローを大幅に改善するまでには至りません。

  • 払済時に洗い替え処理を行う場合の税務取扱についても「実践!逆ハーフタックスの教科書」をご確認下さい。

 

<保険期間短縮>

この法人で契約している某社のGHTは、保険期間短縮が可能であり同時に保険金額の減額処理も可能な保険会社ですので、解約をして個人が受取るよりも期間短縮を行って満期金を個人が受取る事も可能です。もちろんこの場合も個人が受取る満期金に対しては一時所得課税の対象となりますので、納税が発生します。

 

<受取人変更>

GHT契約ですから、死亡保険金受取人は法人・満期保険金受取人は被保険者(社長)となっています。そのために受取人を変更する事で支払保険料の経理処理を変更する事になります。

 

  • ケース1 死亡保険金受取人を被保険者の遺族にする場合

この場合は、受取人変更に伴う経理処理自体は発生しませんが、以後の負担保険料の全額が被保険者に対する給与となります。定期同額給与に合致させる事によって給与損金の処理が可能になります。但し個人の可処分所得が減少してしまう事と、法人のキャッシュフローは改善しない点は要注意です。

 

  • ケース2 満期保険金受取人を法人に変更する場合

この場合は、受取人変更に伴う経理処理が必要になります。これについても解約返戻金相当額で買取るのか、それとも支払保険料総額の1/2で買取るのか?といった諸説が考えられます。

 

ただ受取人変更をする事でA社の負担が減らず、この処理自体にメリットがあまりありませんので、今回この処理は見送られる事になりました。

 

<契約者変更>

結論から申し上げますと今回はこの処理を行う方向で検討が進みました。業績が悪化したA社では保険料負担能力がない、ただ残り保険期間がまだあり、解約時の返戻率が良くない現時点において単に解約するとスキームメリットが減少します。さらには堅調なB社がグループ内にあり、経営者が同じであるという事や保険料負担能力がある事も勘案すれば、B社で負担を続ける方がメリットを享受出来るために、B社へ契約者変更を行う方向になりました。

 

問題は、契約者変更時の契約に対する評価額です。某社は社内見解として、解約返戻金相当額で売買を行い、A社は益金計上・B社は全額を資産計上して残り保険期間で取り崩すべきであるとの回答を出しました。

 

ところが平成24年1月13日の最高裁判決から類推すると上記保険会社の見解とは違う処理方法が考えられます。

 

最高裁判決においては、保険料1/2相当額は保障に対する危険保険料に相当していると考えられており、そのために死亡保険金受取人が法人であるために損金計上が出来るとの見解が示されています。さらに残りの保険料1/2相当額は、満期保険金の原資になっており、これは満期保険金受取人が負担をしているとの見解が示されています。

 

そして養老保険においては、解約返戻金のほぼ全額は満期保険金受取のための原資であり、死亡保険金支払のための危険保険料として積み立てられている金額はごく僅かかほぼゼロに近いと言えるために、法人Aが負担してきた危険保険料部分には解約返戻金がないと判断が出来ると言えます。そのために満期保険金受取人が変わらないままで契約者が変更になってもその時点における経理処理は不要という考え方も可能です。

 

新しく保険料を負担するB社において、保険料負担時に1/2を支払保険料として法人にて損金処理を行い、残り1/2を満期保険金受取人に対する負担として給与・貸付金・借入金返済のいずれかの処理を行う事になります。

 

 

上記の処理方法を経営者ならびに顧問税理士へ説明を行いました。経営者としては、堅調なB社で契約を継続させる事でメリットが引続き享受出来るために非常に喜ばれました。問題は顧問税理士ですが、顧問税理士も「実践!逆ハーフタックスの教科書」の見解に従った見方であれば指摘をされても十分に対抗が出来るという見解を持たれた様です。

 

 

そもそもGHT自体に明確なルールや基準がなく、根拠となるのが平成24年1月13日の最高裁判決と法人税基本通達9-3-4(3)しかない中で、どの様な処理が正解か不正解かは明言をする事は困難です。しかしながら今回のケースの様に、当初想定していない様な事態が発生し、想定していない処理を行わざるを得ない事も起こりえます。もちろん一番無難な処理として、対応する事も出来ますし指摘時には主張出来るだけの要件を揃えた上で対抗する事も出来ます。

 

今回のケースにおいて一番重要だったのは、契約者である経営者が「途中で解約はしたくない」というご意向でした。残り保険期間がまだ長いので、途中解約における損を被りたくないというのが一番のご懸念でした。たまたま業績が堅調な別法人がありましたので、契約者変更という手法で対応出来たのは良かったですが、そもそものご意向を最大限配慮した対処法をご提示出来るかどうか?が重要だと改めて感じました。

 

最終的な判断は経営者がされますので、その判断と処理にお役に立ててホッとした事例でした。今後はこの様なトリッキーな処理や対処法がGHTには求められる事もあり得ると思いますので、何かの参考になれば幸いです。